まだ母と同居してなかった3年前の春、母が急に「一人で三次に帰って墓参りに行ってくる。」と言い出した。それを聞いて私は「母一人で行くのは到底無理。」と思い、一緒に行くことになった。
 確か4月の上旬だった。切符の手配、電車の乗り継ぎ、駅の様変わりなど高齢になると対処しきれないことばかりだ。以前母が住んでいた実家は跡形もなく、近くを流れていた西城川の風景もすっかり様変わりしていた。
 お寺で無事に墓参りを終え、西城川の岸を歩いているときに見つけたのがムラサキサギゴケだった。


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ムラサキサギゴケ  ハエドクソウ科
ムラサキサギゴケ
湿ったあぜ道や畑などに生える多年草。
秋に出た葉で冬を越す。花の終わった頃、根元から茎を横に伸ばし、節ごとに根を出して増えていく。
種子からも芽を出す。おしべ4本のうち2本が長い。1本ある白いめしべの先は2裂していて葉先などで軽く触れると数秒後に閉じる「柱頭運動」をする。白い花もあって花がサギを思わせるのでサギゴケの名がつけられた。
若葉を茹でて食用にできる。(出典 藤沢市教育文化センター身近な草・きのことの語らい)
 

 私は近場でも遠出でも出かけるとき水を打ったビニール袋とクラフトバサミを必ず持参するようにしている。外で何に出会うかわからないからだ。描きたいと思っていた植物、探していた植物、名前の知らない植物など・・・採集できる場合はビニール袋に入れ、口をしばって密閉状態にしておくと、しばらくの間、生き生きとした状態に保てる。
 描いた根つきムラサキサギゴケも三次から芸備線、広島からは新幹線に乗って、一緒に帰宅したものだ。帰宅してからも、ビニール袋のなかで元気でいてくれた。もちろん湘南にもムラサキサギゴケは普通に見られる。
 その頃、ちょうど私の中で「身近な野草」を絵にするプロジェクトが始まったばかりだったところでの出会いだったのでさっそく絵にしたのだった。

お読みいただきまして ありがとうございます。
来月もお楽しみに!
千鶴.