ボタニカルアートと枯れた植物の魅力 〈最終回〉
(江ノ電沿線新聞 2009年9月1日掲載より)

自然は、枯れゆく時も、思いもかけないような美しい姿を見せてくれます。まるで、古色蒼然とした仏像彫刻を見ているような美しさとでもいいましょうか・・・。そこには、静かに深くたたえられた滋味がただよっています。ソロモン王は「この世でもっとも美しいものは、枯れた植物である」という言葉を残しているそうです。同じ感性の人が大昔にもいたのだと、嬉しくなりました。(4ヶ月に渡る「ボタニカルアートと枯れた植物の魅力」掲載の最終回です)


今回の絵は平塚海岸近くで初秋に採集したものである。

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アオツヅラフジ(ツヅラフジ科)
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アオツヅラフジはツル性落葉木本。雌雄異株。秋、ブドウのように6から8ミリの球状の果実が緑色から粉をふいた青色に房状に熟すが有毒である。ツルを利用しカゴを編んだりする。別名カミエビの呼び名もある。


古来から日本に「侘び(わび)寂(さび)枯淡の美」という美意識がある。「枯淡」を辞書で引くと「淡々とした中にも深みのあるさま」とある。枯れた植物は、まさにその枯淡の美を体現してくれているが、実際枯れた植物を描く時も、水彩絵の具を2、3色混ぜ、水をたっぷり混ぜうんと淡くしてハーフトーンで塗る。

古代イスラエルの栄光の時代を築いたダビデ王の子として生まれたソロモン王の言葉をテレビの歴史番組で知り急いでメモに書き留めた。同じことを感じていた人がいたことを知りすごく嬉しかった。

最近読んだ「より少ない生き方」ジョシュア・ベッカー著(かんき出版)の中でソロモン王のことが書かれているのを見つけた。ソロモン王は同時代のどの王より莫大な富を築き、快楽の限りをつくしたという。しかしソロモン王は人生の終りの日記に「すべてが風を追いかけるようなものだった」と心情を吐露したという。きっとそんな中で「この世で一番美しいものは、枯れた植物である」という言葉を残したのだと思う。以下はあくまで私個人の解釈だが...「植物はその場所から動けない。その場で起こるありとあらゆることを受け止めながら精一杯生きて種を作り、枯れていくありのままの淡々とした植物の生き様と姿に美しさを感じたのではないか」と思っている。


  
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千鶴.