松本千鶴の「やすらぎのボタニカルアート」

優しく温かなやすらぎ        日本のボタニカルアート         Gentle, warm, peace of mind    Japanese Botanical Art

2016年06月


梅雨真っ盛り、鮮やかだった新緑に深みが増す頃。
春の花が雨の恵みによって、小さな果実を実らせ始める季節は、木々の間に密やかな楽しみを見つけることが出来る。


春に釣鐘状の白い花を咲かせたブルーベリー。
6月頃から実を付けはじめ、淡い黄緑から、赤紫、甘酸っぱい香りと味のする濃紺の実へと熟していく。その変化は本当に美しく、自然の御業(みわざ)のすごさを感じることが出来る。

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ブルーベリー(ツツジ科)




アントシアニンやポリフェノールが多く健康食品の材料にも使われるスグリ。
高さ1-3m程の低木の茂みを作り、枝には鋭いとげを具えているものが多い。果実は液果で半透明、種がうっすら透けてみえる。ジャムやシロップ等に加工して利用される。


スグリ(スグリ科)
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根に根粒があり、やせ地でもよく育つヤマモモ。
雌株と雄株があり、実は暗赤色に熟し、甘酸っぱく食べられる。樹皮はと褐色染料にもされる。葉は6-12cm、幅1-3.5cmで若い木や切られた枝にはぎざぎざのある葉が出る。ヤマモモの仲間は約7000万年前から現れ、その化石の葉に切れ込みがある。ぎざぎざの葉が出るのは一種の先祖返りと考えられる。

藤沢市教育文化センター刊「校庭の樹木」より

ヤマモモ(ヤマモモ科)
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雨の恩恵を受けた果実は甘酸っぱく成熟し、自然から頂ける贈り物を、昔から人は様々な方法で楽しんできた。
傘をさして走り回った子供の時のように、雨の中小さな実を捜しに外に出てみよう。 



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次号もお楽しみに!
千鶴
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入梅の声を聞くと 一瞬にして辺りの空気が重くなるような気がするが、全ての植物にとって必要な季節。雨音を待っていた仲間たちが寄り添い集う様子がうかがえる。


道端や草地などのやや湿ったところに多くみられるツユクサ(一年草)朝露を受けて咲き始め、日が高くなる午後にはしぼんでしまう一日花。どこにでも見られるありふれた花であるが、よく見ると花びらの青の美しさに目を見張る。

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ツユクサ(ツユクサ科)
名前は"露を帯びた草"からつけられた。
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「朝露に 咲きすさびたる 鴨頭草(つきくさ)の 日暮るるなへに 消(け)ぬべく思ほゆ」
(万葉集 巻10 2281)(鴨頭草=露草)


朝咲いた花が昼にはしぼんでしまうことから、儚さや移ろいやすさの象徴として『万葉集』に詠ったものが9首も存在する。古くから日本人に親しまれていた花の一つである。

絵を描く時は花が咲いている午前中に花だけをデッサンし色付けを終えてしまい、午後から葉をゆっくりと仕上げる。




多湿を好み家の端などに自生し根強く生きるドクダミ(多年草)
4枚の白色の総苞(花弁にみえる部分)のある棒状の花序に淡黄色の小花を密生させ、全草に強い臭気が宿る。本来の花はガクもなく、おしべとめしべからなる。繁殖力が高く、ちぎれた地茎からでも繁殖する。

ドクダミ(ドクダミ科)
東アジア地域に分布。
利尿作用や便秘改善、炎症の抑制、血管を丈夫にする働きなどの薬効がある。
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江戸時代の書物である『大和本草』や『和漢三才図絵』に記載があるほど、古くから健康効果が知られる。

一輪ざしに飾ると、地味で渋く落ち着いた美しさを堪能させてくれる。



何気ない日常目にする草花たちに、長い歴史が刻まれている。



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緑の深さも少しづつ増して来る頃、山中では、たくさんの木々に咲く花たちに出会えるが、ひときわ引きつけられる美しい花がある。


糸魚川から静岡構造線の東側地溝帯をフォッサマグナと名付け、この地溝帯の南半分には限られた地域分布植物があり、その中に私がとても魅了された花が咲く。それは箱根町や山中湖村の花にもなっているハコネサンショウバラだ。

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ハコネサンショウバラ(バラ科)
小葉9-19枚の奇数羽状複葉でサンショウの葉に似ているのでこの名が付いた。
環境省のレッドデータブックでは、絶滅危惧II類(VU)に登録されている。
蕾は濃赤色をしているが開くと淡紅色になり、一日花で、咲いた日のうちに散ってしまう。


緑に映え、気品すら感じられる淡いピンク色の花。一重の中輪(5〜7cm)
その花の美しさは、例えようもない花のオーラがあるとでも言おうか。その存在感に強く心惹かれる。 




この時期に存在感を持つ花がもう一つある。


ヤマアジサイ(アジサイ科)

ガクアジサイと比べ花の色が多様性に富む。花序は直径7–18センチ
葉質は薄く光沢がなく、小さく長楕円形・楕円形・円形など形はさまざま。

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西洋アジサイに比べると小ぶりではあるが、楚々としながらも凛として咲くヤマアジサイだ。 
 
 
 

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