入梅の声を聞くと 一瞬にして辺りの空気が重くなるような気がするが、全ての植物にとって必要な季節。雨音を待っていた仲間たちが寄り添い集う様子がうかがえる。


道端や草地などのやや湿ったところに多くみられるツユクサ(一年草)朝露を受けて咲き始め、日が高くなる午後にはしぼんでしまう一日花。どこにでも見られるありふれた花であるが、よく見ると花びらの青の美しさに目を見張る。

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ツユクサ(ツユクサ科)
名前は"露を帯びた草"からつけられた。
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「朝露に 咲きすさびたる 鴨頭草(つきくさ)の 日暮るるなへに 消(け)ぬべく思ほゆ」
(万葉集 巻10 2281)(鴨頭草=露草)


朝咲いた花が昼にはしぼんでしまうことから、儚さや移ろいやすさの象徴として『万葉集』に詠ったものが9首も存在する。古くから日本人に親しまれていた花の一つである。

絵を描く時は花が咲いている午前中に花だけをデッサンし色付けを終えてしまい、午後から葉をゆっくりと仕上げる。




多湿を好み家の端などに自生し根強く生きるドクダミ(多年草)
4枚の白色の総苞(花弁にみえる部分)のある棒状の花序に淡黄色の小花を密生させ、全草に強い臭気が宿る。本来の花はガクもなく、おしべとめしべからなる。繁殖力が高く、ちぎれた地茎からでも繁殖する。

ドクダミ(ドクダミ科)
東アジア地域に分布。
利尿作用や便秘改善、炎症の抑制、血管を丈夫にする働きなどの薬効がある。
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江戸時代の書物である『大和本草』や『和漢三才図絵』に記載があるほど、古くから健康効果が知られる。

一輪ざしに飾ると、地味で渋く落ち着いた美しさを堪能させてくれる。



何気ない日常目にする草花たちに、長い歴史が刻まれている。



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